よしもと
よしもと

地域の皆さん、こんにちは。
最低気温が一桁台の日もちらほら増えてきましたが、いかがお過ごしでしょうか。
今回は少し趣向を変えて、先日報じられた「医療機関の倒産が過去最多」というニュースから、
診療所の舞台裏と地域の医療のこれからについてお話しします。

先日、東京商工リサーチから、2026年1〜9月の医療機関の倒産が同期間として過去最多になったという調査結果が発表されました。入院設備のある病院は前年並みでしたが、クリニック(診療所)と歯科医院は増えており、特にクリニックは過去最多を更新しています。

59件医療機関の倒産
(1〜9月・過去最多)
29件うちクリニック
(前年同期18件)
約97%再建されず
破産で閉院

倒産の理由で目立ったのは「後継者がいない」(14件)と「人手不足」(7件)でした。そこに光熱費や物品の値上がり、人口減少による受診者数の減少などが重なっていると分析されています。

開業して1年余りの当院にとっても、遠い話ではありません。

念のため申し添えると、当院がすぐにどうこうという話ではありません。むしろ、この先も長く続けていくために、今のうちから考えておきたいことのお話です。

診療所は「値上げ」ができません

スーパーや飲食店は、仕入れ値や人件費が上がれば価格に反映できます。しかし、保険診療の価格(診療報酬)は国が全国一律で決めています。医療機関が自分で値段を変えることはできません。

価格の見直し(診療報酬改定)は原則2年に1度です。物価や賃金の上昇に対応する仕組みも設けられてはいます。それでも、暖房費や電気代(北海道の冬は特に負担が大きくなります)、医療材料、電子カルテなどのシステム利用料の上昇に追いつくのは簡単ではありません。

人件費は「削れない費用」です

医療機関の支出の中で大きな割合を占めるのが人件費です。

診察室で医師が患者さんと向き合う時間は、診療全体のほんの一部です。その前後では、予約の調整、問診、採血や検査、処方内容の確認、会計、書類作成など、たくさんの人の手が動いています。

「患者さんがまだ少ないなら、スタッフを減らせばいいのでは」と思われるかもしれません。しかし、診療の安全と質を保つには最低限必要な人数があります。その人数は、来院が少ない日でも変わりません。薬や検査のダブルチェックも、待合室での急な体調変化への対応も、人がいなければできないのです。

当院も開業から日が浅く、ありがたいことに来院される患者さんの数はゆっくりと伸びている段階です。それでも、スタッフの人数や待遇を削って帳尻を合わせることは、当院が選ぶ道ではありません。スタッフの給与はきちんと計画して確保しています。経営の世界では「社長の給料は最後」と言うそうですが、当院はその教えにとても忠実です。院長の収入は、勤務医時代の自分にはちょっと見せられない数字になりました。おかげで日々の生活も見事に「ダウンサイジング」中です(笑)。まあ、ここは院長が自分で引き受けると決めた部分ですので、お気になさらず。スタッフの体制を削ったとき、真っ先に影響を受けるのは患者さんだからです。

診療所が減ると、病院も困ります

日本の医療は役割分担で成り立っています。日頃の診療や、落ち着いている慢性疾患の管理は診療所が担います。精密検査、入院、救急、専門的な治療は病院が担います。

身近な診療所が閉じると、そこに通っていた患者さんは別の診療所か、病院の外来に移ることになります。病院の外来が混雑すれば、病院の医師や看護師が本来の役割である救急・入院・手術に割ける時間が減ります。勤務医の負担が増えれば退職が進みます。その結果、診療科の縮小や救急の受け入れ制限につながります。これは、全国の地方ですでに起きていることです。

私自身、開業する前は病院で当直や救急の現場に立っていました。「近所のクリニックが一軒なくなった」という出来事は、巡り巡って「いざという時に救急車を受け入れてくれる病院が減った」という形で返ってくるかもしれません。今は元気で、病院にかかる予定のない方にとっても、決して人ごとではないのです。

皆さんにお願いしたいこと

特別なことをお願いしたいわけではありません。

  • 身近な診療所に「かかりつけ」として通い続けてください病状が落ち着いている方は、地域の診療所での通院を続けてください。病院での治療が一段落したら、紹介状を持って地域の診療所へ移る。この流れも、病院の機能を守ることにつながります。
  • 調子が良くても、定期的な受診や検査は続けてください通院中の方は、症状が落ち着いていても定期的な受診や検査を続けてください。今は通院していない方も、特定健診(40〜74歳)や後期高齢者健診(75歳以上)、がん検診などを年に一度は受けておくことをおすすめします。病気は早く見つかるほど治療の負担が軽く済むことが多く、悪化してからの治療は、ご本人にとっても、地域の医療全体にとっても負担が大きくなります。
  • 気になることは、受診の際に率直にお伝えください診療所は、患者さんと一緒に育っていく場所だと考えています。

おわりに

今の日本の医療は、そこにあるのが当たり前のように見えます。しかし実際には、多くの人の手と、地域の皆さんの受診によって支えられています。

当院は、患者さんと一緒に病気に向き合うパートナーとして、この永山の地で長く診療を続けていくことを目指しています。そのために、今日もスタッフと一緒に、目の前の診療にコツコツ取り組んでいきます。

よしもと内科クリニック

出典:東京商工リサーチ「1-9月『医療機関』倒産 過去最多の59件 身近なクリニック、歯科医院で苦境が鮮明」(2026年10月18日配信)

よしもと
よしもと

最後までお読みいただき、ありがとうございました!