地域の皆さまこんにちは。本日は新たにワクチン案内ページを作成しましたご案内と、あわせて2026年4月から定期接種になる予定の肺炎球菌ワクチンなどについて解説いたします。
肺炎球菌ワクチンが
大きく変わります
2026年4月からの制度変更と、
新しいワクチン「キャップバックス」についてのお話です。
2026年3月9日 更新
こんにちは。よしもと内科クリニック院長の吉本です。
今回は、2026年4月から高齢者の肺炎球菌ワクチンの定期接種が変わることと、2025年に新しく登場した「キャップバックス(PCV21)」というワクチンについて、できるだけやさしい言葉で解説してみたいと思います。
「肺炎球菌ワクチンって、そもそもどういうもの?」という方も、「前にニューモバックスを打ったけど、次はどうすれば?」という方も、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。
🦠 肺炎球菌ってどんな菌?
肺炎球菌(はいえんきゅうきん)は、私たちの鼻やのどにふだんから住んでいることがある細菌です。健康な状態では悪さをしませんが、風邪をひいた後や、体力・免疫力が落ちたときに増殖して、肺炎をはじめとするさまざまな感染症を引き起こします。
肺炎だけではありません。血液中に菌が入り込む「菌血症」や、脳を包む膜に炎症を起こす「髄膜炎」など、命にかかわる重い感染症の原因にもなります。特に65歳以上の方や、糖尿病・心臓病・呼吸器の病気・腎臓病がある方、免疫を抑えるお薬を使っている方は重症化しやすいため、ワクチンによる予防がとても大切です。
📋 2026年4月から何が変わるの?
これまで65歳の方を対象とした定期接種(公費助成あり)では、「ニューモバックスNP(PPSV23)」というワクチンが使われてきました。国内で約40年もの間使われてきた、歴史あるワクチンです。
しかし2026年4月1日からは、定期接種のワクチンが「プレベナー20(PCV20)」に変わります。これは2025年12月に厚生労働省の審議会で了承された方針です。
・2026年3月まで → 定期接種はニューモバックスNP
・2026年4月から → 定期接種はプレベナー20(PCV20)へ
・対象は65歳の方(+60〜64歳の特定疾患のある方)
・1回の接種で完了(従来のような5年ごとの再接種は原則不要)
・65歳を超える方への経過措置は設けられない予定
ニューモバックスは効果が約5年で弱まるため、これまで「5年ごとに打ち直しましょう」と言われていた方も多いと思います。今回の変更で、原則1回の接種で長く効果が続くワクチンに切り替わります。これは大きな進歩です。
💉 ワクチンの種類のちがい ― 「多糖体」と「結合型」
今回の制度変更で一番大事なポイントは、ワクチンの「タイプ」が変わることです。少し専門的な話になりますが、できるだけかみ砕いてご説明します。
ニューモバックス = 多糖体ワクチン
肺炎球菌の表面にある糖の成分(莢膜多糖体)をそのまま使って、身体に「この菌に注意してね」と教えるワクチンです。ただし、免疫の「記憶係」がうまく育たないため、数年で効果が薄れてしまうのが弱点でした。
プレベナー20・キャップバックス = 結合型ワクチン
糖の成分にタンパク質を「くっつけて」あるワクチンです。このおかげで免疫の司令塔(T細胞)がしっかり働き、記憶力のある免疫(メモリーB細胞)が育ちます。将来また同じ菌が来たときに、すばやく抗体をつくって戦えるようになります。
🔑 たとえ話で考えてみましょう。
多糖体ワクチンは「犯人の顔写真を一度だけ見せる」ようなもの。しばらくすると忘れてしまいます。
結合型ワクチンは「顔写真+特徴メモ+記憶係」をセットで渡すイメージです。記憶係がいるので、何年経っても犯人が来たらすぐに気づけます。
📊 3つのワクチンを比べてみましょう
現在使われている(または使える)代表的な3つのワクチンを並べてみます。
| ニューモバックスNP (PPSV23) |
プレベナー20 (PCV20) |
キャップバックス (PCV21) |
|
|---|---|---|---|
| タイプ | 多糖体 | 結合型 | 結合型 |
| カバーする 菌の種類 |
23種類 | 20種類 | 21種類 |
| 重症感染症の カバー率 |
約56% | 約56% | 約80% |
| 免疫の 記憶力 |
弱い (5年で減弱) |
強い (長期持続) |
強い (長期持続) |
| 接種回数 | 5年ごとに再接種 | 原則1回 | 原則1回 |
| 定期接種 (2026年4月〜) |
終了 | ✅ 公費対象 | 任意(自費) ※今後検討予定 |
※カバー率は、国内の血清型分布調査(2024年)に基づく推計値です。「カバーする」とは、その型に対する免疫を誘導できることを意味し、実臨床での予防効果そのものとは異なります。
✨ キャップバックス(PCV21)ってどんなワクチン?
キャップバックスは、MSD株式会社が開発した成人のための肺炎球菌ワクチンです。2025年8月に日本で承認され、同年10月29日から接種できるようになりました。
このワクチンの一番の特徴は、最近の日本で実際に成人の重い感染症の原因になっている菌の型を、もっとも幅広くカバーしていることです。
具体的には、プレベナー20やニューモバックスでは対応できない血清型(15A、15C、16F、23A、23B、24F、31、35Bなど)を新たに含んでいます。これらは近年、高齢者で増えていることが確認されている型です。
① カバー率が高い ― 成人の重症感染症原因の約80%をカバー
② 成人のために設計 ― 高齢者で増えている菌の型を重点的に含む
③ 1回で完結 ― 免疫の記憶が形成され、再接種は原則不要
キャップバックスは、現時点では「任意接種(自費)」です。
2026年4月からの定期接種に採用されるのはプレベナー20(PCV20)で、キャップバックスではありません。将来的にキャップバックスが定期接種に組み込まれるかどうかは、国の審議会で今後検討される予定です。
📘 学会の最新の考え方
2025年9月、日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会の合同委員会が最新の指針(第7版)を公表しました。そのなかで注目すべき変更がいくつかあります。
まず、ニューモバックスの5年ごとの再接種は「原則として選択肢としない」ことが明記されました。つまり、これからはニューモバックスを繰り返し打つのではなく、結合型ワクチン(PCV20またはPCV21)へ切り替えていく方向が示されています。
また、過去にニューモバックスを接種した方でも、最終接種から1年以上経過していれば、キャップバックス(PCV21)やプレベナー20を追加接種できることも記載されています。追加接種すれば、以後のニューモバックス再接種は不要になります。
🏔 旭川市にお住まいの方へ
旭川市でも国の方針に沿って定期接種が行われています。現在は65歳になる年度にニューモバックスの定期接種を受けられますが、2026年4月以降はプレベナー20に切り替わる見込みです。
自己負担額や具体的な手続きについては、ワクチン変更に伴い今後旭川市から発表される予定です。確定しましたら当院でもお知らせいたします。
旭川市保健所 保健予防課
電話:0166-25-6237(平日 8:45〜17:15)
生活保護世帯・市民税非課税世帯の方は、自己負担額が免除される場合があります。
🔀 「自分はどうすればいい?」接種歴べつの考え方
ご自身の状況によって、おすすめの接種パターンが少し変わります。目安として整理してみました。
これまで肺炎球菌ワクチンを打ったことがない方
→定期接種(公費)で
プレベナー20
※2026年4月以降
→任意接種で
キャップバックス
またはプレベナー20
ニューモバックスを打ったことがある方
→以後のニューモバックス再接種は不要に
どのワクチンが最適かは、接種歴だけでなく、お持ちの病気の内容やお薬の種類によっても変わります。迷ったときは、遠慮なくご相談ください。
❓ よくあるご質問
私個人としては、定期接種(公費助成あり)のタイミング以外であれば、カバー率の高いキャップバックスをお勧めしたいと考えています。
接種について迷われている方へ
「自分はどのワクチンを打てばいいの?」「前に打ったのがどれだったか覚えていない」 ― そういった疑問があれば、遠慮なくおたずねください。接種歴・年齢・既往歴等を踏まえて、一緒に最適な方法を考えます。
よしもと内科クリニック|旭川市永山 メディカルスクエア永山内
受付窓口にてご予約・ご相談を承っております。
・厚生労働省「高齢者の肺炎球菌ワクチン」ページ
・厚生科学審議会 予防接種基本方針部会(2025年12月19日)資料
・CDC: Recommended Adult Immunization Schedule, United States, 2025
・国立感染症研究所「成人用肺炎球菌ワクチンファクトシート(2025年7月4日版)」
・MSD株式会社「キャップバックス®承認取得について(2025年8月8日)」
(文責:よしもと内科クリニック 院長 吉本)
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
